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『転生回遊女』 小池 昌代

評価:
小池 昌代
小学館
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(2009-11-30)

舞台女優だった母親が亡くなって17歳で天涯孤独となった桂子(かつらこ)は、芝居に出演することになり、ひと月後の稽古まで宮古島へと「タビ」に出る――。

乳をたらす大公孫樹、たれ下がるガジュマルの気根、ぬうっとおしべをつきだすハイビスカス・・・うっそうとはびこる植物たちの濃密な気配がお話いっぱいに広がっています。
幸福というものはそれを知る者には、さりげなく甘い、砂糖のようなものだ。けれど知らない者には、劇薬のように効きすぎることがある。甘美なはずの幸福のなかにいて、わたしは皮をむかれたうさぎのように哀しかった。
幸福と哀しみのはざまで、するすると腕をのばす枝のように人とつながり、樹木の精と戯れるようにして男たちとまじわる桂子。亡き母の影を背負いながらも自由奔放に生きる彼女は、樹木と交歓し、うようよとうごめき、さすらい、それでも前へ前へと新しい人生の一歩を踏み出していきます。
空を覆いかくすように繁茂する枝葉、とろりと青くさい樹液、太古からの生命の鼓動。
なまなましく、とてもしずかで、けれど強靭なエネルギーにみちた物語でした。
Author: ことり
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