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『初恋温泉』 吉田 修一

評価:
吉田 修一
集英社
¥ 1,365
(2006-06-26)

突然妻に別れ話を切り出され、とまどう夫。雪の一軒宿の謎めいたカップル。初めて恋人と温泉旅館に泊まる高校生。
熱海・青荷・黒川ほか、日常を少し離れた温泉宿で繰り広げられる男と女の風景。

しずかな趣きのある恋愛小説集。「無音という音」、「透明という色」・・・文中にあったこんな言葉たちがしっくり馴染む世界です。
からだを芯からあたためてくれる温泉、けれどこの本からは、なにかひえびえとしたものばかりを感じてしまった私。単に関係の冷めた男女についても描かれている、という理由だけではないような・・・。
それはもしかしたら、それぞれのお話でふとした拍子に浮き彫りになる、男と女のズレや埋められない温度差にあるのかもしれません。

日常の裏側にあるしっぽりとした温泉宿。
山のにおい、太鼓のような波音、目に見える風。
行ったことがない場所なのに、その風景描写のたくみさは、まるで自分がそこにいるかのような錯覚をおぼえるほど。沈黙さえもお話を豊かにいろどります。
あるいは沈黙ほど雄弁なものはないということ? すみずみにまで‘気配’が漂い、どのお話もあいまいな余韻ののこるラストが印象的でした。

『初恋温泉』、『白雪温泉』、『ためらいの湯』、『風来温泉』、『純情温泉』を収録。
Author: ことり
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