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『イーハトヴ童話 注文の多い料理店』〔再読〕 宮澤 賢治

このたび、縁あって私のもとにやってきた古本です。
こちらは大正13年発刊のオリジナルを復刻したもので、お値段もお手頃(美本なのに500円ぽっち!おなじシリーズの『春と修羅』も1000円で購入)でしたが、やさしくて味わい深い佇まいにひとめぼれ。函から取りだしたときの優美な装丁――濃紺に雪景色の絵、右から左へとながれる金の箔押しタイトル――にもたまらなく惹かれてしまいました。
つい先日も宮沢賢治全集で『注文の多い料理店』を読んだばかりの私、なにか目に見えない素敵な引力を感じるこの頃なのです。

賢治さんのみずみずしくどこか秘密めいた童話の数々は、その都度いろいろな媒体でふれてきましたが、やはり旧かな遣いで菊池武雄さんの挿画がはいったオリジナル本は格別の趣・・・。
『どんぐりと山猫』も、『注文の多い料理店』も、『月夜のでんしんばしら』も、どれもこれも冴えざえとした秋の星空のようにしみ入ります。そして序文がこの上なく透明な物語の象徴としてそこにあり、彼の繊細でうつくしい心をそっくりあらわしているようで、私は「序」がこの本で一ばん好き、と言って過言ではないかもしれません。



わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびらうどや羅紗や、寶石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鐵道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。
(中略)これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。

『どんぐりと山猫』、『狼森と笊森、盗森』、『注文の多い料理店』、『烏の北斗七星』、『水仙月の四日』、『山男の四月』、『かくはばやしの夜』、『月夜のでんしんばしら』、『鹿踊のはじまり』を収録。
Author: ことり
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