<< 『おさんぽ』 江國 香織、(絵)こみね ゆら*prev
『SILENT LOVE』 五木 寛之 >>*next
 

『マークスの山』 眤 薫

昭和51年南アルプスで播かれた犯罪の種は16年後、東京で連続殺人として開花した――精神に<暗い山>を抱える殺人者マークスが跳ぶ。元組員、高級官僚、そしてまた・・・謎の凶器で惨殺される被害者。バラバラの被害者を結ぶ糸は?マークスが握る秘密とは?
捜査妨害の圧力に抗しながら、冷血の殺人者を追いつめる警視庁捜査第一課七係合田刑事らの活躍を圧倒的にリアルに描き切る本格的警察小説の誕生。

平成5年上半期の直木賞受賞作です。
当時まだ10代だった私は、なんだかむずかしそうと思って敬遠してしまったのですが、今からでも読んでよかった、そう思います。

16年かけてあばかれる犯罪を、その「播種」から追っていくというストーリー。
精神分裂症を患う犯人と彼に愛情をそそぐたった一人の女性、長い年月をかけて犯罪が犯罪を生みだす過程・・・そこにそれぞれの事件で立ち上げられた捜査本部の動向がリアルに描き出され、連続殺人事件の謎を追うことで、しだいに過去に埋もれた殺人事件がうかび上がってくるのです。
登場人物ひとりひとりにリアリティがあるというのかしら、表の顔に隠された裏の表情みたいなものまできちんと描かれていて、刑事同士のやりとりなど細部にわたって楽しめます。ただ、警視庁捜査一課・合田刑事の周辺の刑事たちがある時は名前、ある時はあだ名で出てくるので整理するのが大変ではあったのだけど・・・。

隠蔽された殺人をあばくのが凄惨な連続殺人事件だったということ、それからマークスのぬぐい去れない傷と心のなかの深い闇が、壮大な雪山の残像と共鳴し、ひどくせつない余韻を味わいました。
それにしても女性作家とは思えない、なんてゴツゴツと骨太な文章なのでしょう。それでいて、冷静なのに熱気が伝わってくるこの感じ・・・熱いのです。
男性作家顔負けの、‘男前な’小説を堪能しました。
Author: ことり
国内た行(その他) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -