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『赤い脣 黒い髪』 河野 多惠子

評価:
河野 多恵子
新潮社
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(1997-02)

心と躰の奥底に潜む官能、甘美な戦慄――。
愛らしい孫娘の脣に思わず魅入られてしまう初老の女の心の揺れを捉え、デビュー作『幼児狩り』以来のテーマの見事な結実と絶賛された『赤い脣』、耳の奥よりもっと遠いところから「大統領が死んだ・・・」という囁きを聴いた女の行動がスリリングな『大統領の死』、高齢ながら豊かな黒髪を誇る父娘の秘密を問わず語りする『黒い髪』、「今日は何だか、皆ともお別れのような気がするんでね」――自分の死を予告する老人とその家族の日常を描く『來迎の日』など七篇。

『赤い脣』、『片冷え』、『大統領の死』、『朱験』、『途上』、『黒い髪』、『來迎の日』。
お話を読みながら、自分の身体のところどころが急にひやりとなったり、かと思えばぽうっと熱をもったり・・・みょうに生々しい感覚にとらわれた、大人の女のエロティシズム香る短篇集。
それぞれどこかしらがずれていて、なにかが決定的に歪んでいる・・・登場するのはそんな女性たちばかりなのに、気づけば奇妙に共感していることに愕いた私です。
読んでいるうちに自分の中にあるクネクネした柔らかい、そしてどうしようもない女のぶぶんが目覚めてきそう。

一ばんのお気に入りは、『朱験』。
以前『朱験』を収めたアンソロジーを読んだことがあり、その突出した素晴らしさに感動して買い求めたのがこの本なのですが、このなんともいえない妖しさ、艶かしさ・・なんど読んでもぞくりと心をとろかせます。
なにかにたとえるなら、じっくり煎じた秘密めいた薬湯の苦み。
いつのまにか私は、うんと遠い場所までつれて行かれてしまうのです。
Author: ことり
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