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『悲歌(エレジー)』 中山 可穂

評価:
中山 可穂
角川書店(角川グループパブリッシング)
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(2009-09-18)

骨に染みいり血が滲む、絶壁のような険しい孤独。追い詰められた魂。私は愛してはいけない人を愛してしまったのか――。能楽のストーリーにインスパイアされた物語3篇をつむぐ傑作恋愛小説集!

『隅田川』、『定家』、『蝉丸』・・・3つの物語。
黒いマントに縫いつけられた血染めの薔薇、乳白の墓石にびっしりと絡みつく蔦蔓、アンコールワットのおびただしい数の壁画のなかの、たったひとりのデヴァター・・・この本を読んだいまなら、ただひとつ、その象徴を思いうかべるだけで、それぞれの物語の奥深いせつなさがこみ上げてきます。
ほとばしる思いを必死でおさえ込み、けれど最終的にはおさえきれなくて・・・自ら破滅への道をえらんでしまう人びとの哀しいまでの熱情に、心がきりきりと痛みました。

弱法師』とおなじく、能そのものが物語にからんでくることはありませんが、タブーを秘めた愛の姿が能の世界の妖しさに重なって、純粋で脆弱で孤独で・・・。高く澄みきった美しい歌声が耳元に聴こえてくるようです。
ひどく淋しげで、小さくふるえる、涙まじりの歌声。
Author: ことり
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