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『反少女の灰皿』 矢川 澄子

評価:
矢川 澄子
新潮社
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(1981-01)

まず、このタイトル。すごくすごく好きです。
だって「少女」と「灰皿」――これほど似つかわしくなく、それでいて蟲惑的なとり合わせ、ほかにない気がするもの。

おもに書物・読書に関するエッセイをまとめたというこの本。矢川さんの読書歴には量も内容も遠くおよばない私ですが、およばないなりに愉しんでいました。
聡明で美しくて、なめらかなシルクのような文章。なまあたたかな乙女の息づかいをすぐそばで感じているような、そんなちょっぴりくすぐったい読みごこちを。

少女の一頃、告白ということばに曰くいいようのない嫌悪を覚え、まちがっても口にのぼせぬばかりか、印刷物中に散見するその字面からさえも目をそむけたくなるほどの思いをもてあましたことがあった。(中略)
その頃のわたしは、もし好きな詩をと問われれば、ためらうことなく次の二行をあげただろう。出典は知れている。龍之介である。
  看君双眼色
  不言似無愁
不言。それこそ少女にとっての金科玉条であった。現実のおぞましさはすでに百も承知している。その猥らないかがわしさは、無様なこちらの口舌にかかることによってさらに目もあてられぬ醜状をさらけだすことであろう。(『こころの小宇宙』)

『囚われの少女さまざま』の章で、シュペルヴィエルの『沖の小娘』が引用されているのですが、はるかな沖合の波間にうかぶ幻の村でいつまでも老いることなく生きつづける永遠の少女・・・切々と美しいこの少女は、まるで矢川澄子さんその人みたい。
ぼんやりはるかな空と海のあいだ・・・淡く消えいりそうなその波間に、彼女の愛らしいほほえみが見えるようです。
Author: ことり
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