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『九月姫とウグイス』 サマセット・モーム、(絵)武井 武雄、(訳)光吉 夏弥

タイの国を舞台に、心やさしい九月姫と八人のいじわるな姉さんたちが、歌のじょうずなウグイスをめぐって広げる物語。
イギリスの作家モームの唯一の童話。

エキゾティックな気品にあふれつつ、ものすごく個性的な絵本。
九月姫というお姫さまが大好きなウグイスを豪奢なかごにとじ込めてしまい、けれどウグイスのしあわせを考えてふたたび空へと放ってやる・・・といういっけんありふれたお話なのですが、でもこの絵本がびっくりするほど斬新なのは――書かれたのはずっとずっと昔なのに――、本筋からはなれたぶぶんにある可笑しみのせい。
とぼけた魅力の王さまとおきさき。王さまの一存で名前をころころ変えられてしまう気の毒なお姫さまたち。そしてなんといってもこの絵本のなかでの‘理屈’(通っているんだかいないんだか・・・)がすごすぎて笑っちゃいます。
なんべんも名前を変えられたので、上のお姫さまたちはすっかり性質がひねくれてしまったというのです。そのうえ上のお姫さまたちにはそれはそれはかわいそうな運命が待っていて、あまりにも容赦のない幕の引き方にぽかんとしてしまうほど。
こんなとっぴょうしもない新鮮な驚きが、心やさしい九月姫(末娘の九月姫は、この名前でしかよばれたことがないため素直でやさしい、というのがこのお話の‘理屈’です)の物語をより懐の深いものに仕上げているように思いました。

ちいさななかにも、まっとうさと滑稽さとが奇跡的なバランスで成り立っている物語。
白檀のようなかぐわしい匂いのただよってきそうな美しい絵本です。

(原題『Princess September and the Nightingale』)
Author: ことり
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