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『鳥―デュ・モーリア傑作集』 ダフネ・デュ・モーリア、(訳)務台 夏子

ある日突然、人間を攻撃しはじめた鳥の群れ。彼らに何が起こったのか?ヒッチコックの映画で有名な表題作をはじめ、恐ろしくも哀切なラヴ・ストーリー「恋人」、奇妙な味わいをもつ怪談「林檎の木」、出産を目前にしながら自殺した女性の心の謎を探偵が追う「動機」など、物語の醍醐味溢れる傑作八編を収録。
『レベッカ』と並び代表作と称されるデュ・モーリアの短編集、初の完訳。

サブタイトルに「傑作集」ということばがえらばれていますが、収められた8編――『恋人』、『鳥』、『写真家』、『モンテ・ヴェリタ』、『林檎の木』、『番』、『裂けた時間』、『動機』――すべてがおもしろく、夢中で頁をめくった私です。
どれもそれぞれに不気味で、どこかしらに‘怖さ’をかかえた物語たちは、人の心にふだんは潜んでいるあるぶぶんを揺るがし、ざわつかせ、それは怖さとともに哀しさという感情をも私たちにもたらすようです。でもまた何度でも手にとって読みたくなる、そういう本だと思いました。
いくつかえらぶとするならば、ちょっぴりセンチメンタルな苦さののこる『恋人』、襲いかかるスリルと閉塞感にぶるぶる震えながら読んだ『鳥』、突き出た山の断崖にある幻想的な修道院をめぐる『モンテ・ヴェリタ』、ラスト数行でふわりと広がりをみせる『番』、真相にせまった探偵の最後のやさしさが光る『動機』・・・でしょうか。
読み終えて、思わずスタンディング・オベーションしたくなった短編集。ほんとうに「傑作」ぞろい、おすすめです。

四角い中庭の一辺は上に向かい、モンテ・ヴェリタのふたつの峰へとつながっていた。氷をかぶった美しい峰はいま、昇りつつある太陽の薔薇色の光を浴びている。氷に刻まれた階段は、頂上へとつづいていた。なぜ、壁の内側が、そしてこの中庭が、これほどまでに静かだったのか、わたしはようやく悟った。(『モンテ・ヴェリタ』)

(原題『THE APPLE TREE』)
Author: ことり
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