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『月蝕』〔短篇〕 山尾 悠子

評価:
あさの あつこ,芦原 すなお,石井 睦美,大島 真寿美,加納 朋子,川島 誠,檀 一雄,松村 栄子,森 絵都,山尾 悠子
ジャイブ
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(2009-03-10)

京都の大学生・叡里(本名あきさと、通称えいり)は、従姉からの依頼で彼女の娘、11歳の真赭(ますほ)を預かることになる・・・。
アンソロジー『みじかい眠りにつく前に 供戮里覆の一編。

じっとりと蒸した部屋。立ちこめるタバコの煙と、鼻をつく湿布薬の匂い――
どこか性的な気配を感じさせながら、少しずつゆがみ、いつのまにかずれていく・・・たしかに立っていたはずの現実から、知らず知らずのうちに奇妙な空間へずんずん分け入ってしまう物語です。
急にひどい寒気を感じたのがその音を聞く前だったのか後だったのか、どうしても思い出すことができない。それは、冷房のききすぎた部屋に入った瞬間に感じるような不健康な寒さだったが、その時には急に日がかげって涼しくなったのだとしか思わなかったらしい。
混線した電話、連絡のとれない友人たち、不思議な「夢の話」をする少女・・・読み進めば進むほどふくらんでいく不安感。燃えたつような西日をあびて、ほの赤い色を帯びる京都の街が、ますますこのお話を妖しく幻想的なものにしています。
夢なのかうつつなのか・・・。読後は、狐につままれたようなそんな感じ・・・。

このお話が、いまから33年も前に書かれたなんて驚きです。そういえば、田辺聖子さんの『言い寄る』を読んだときにもおなじことを思ったっけ・・・。30年もの時のへだたりをこれっぽっちも感じさせないなんて、ほんとうに「すごい」のひと言。
底本は、『山尾悠子作品集成』。いつかぜったいに読んでみたい本のひとつです。
Author: ことり
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