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『マンスフィールド短編集』 マンスフィールド、(訳)安藤 一郎

楽しく華やかな園遊会の日にローラの心を占めていたのは、貧しい家族を残して事故死した近所の男のことだった。感じやすい少女の人生への最初の目覚めを描く代表作『園遊会』を含む15編を収める。
一種の印象主義ともいうべき、精緻で微妙な文体で、詩情豊かに人間心理を追求する。純粋な自我を貫いた一生を通して、いつも生の下に死の影を見ていた著者の哀愁にみちた短編集である。

はじめて手にしたキャサリン・マンスフィールドの本。チェーホフに表現技法を学び、作家としての地位を確立しながら、34歳の若さでこの世を去ったイギリスの作家さんです。
15編収められているなかで一ばんすばらしかったのは、やはり冒頭の『園遊会』。繊細な少女の心の動きを通して、人間の醜いぶぶんと美しいぶぶんを、鋭く、みずみずしい感性でみごとに描いてみせてくれています。
ある少女の、ある一日。少女が見た日常のなかの永遠。
さりげなく置かれたエピソードたちは、たりないものもよけいなものもいっさいなくて、ひとつひとつが必要なできごととして結末(この結末がまたすばらしいのです)に向けて収束する・・・こんな完璧な短編小説はほかにないかもしれません。

そういえば、どのお話も日々のふとしたことが描かれています。毎日の延長線上で新しい視点に目覚めたり、自分の人生はなんだったのか考えたり・・・。『園遊会』以外では、『パーカーおばあさんの人生』や『初めての舞踏会』が印象的。
身分制度がまだまだ色濃くのこる1920年代のイギリスで、裕福な階級とそうでない階級を切りとった小さいながらもきらりと光る物語たち。華やいだあかるさのなかに不穏な影をちらちらとゆらめかせながら、生と死について問いかけてきます。

(原題『The Garden Party』)
Author: ことり
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