<< 『空にうかんだ大きなケーキ』 ジャンニ=ロダーリ、(訳)よしとみ あや*prev
『ころころろ』 畠中 恵 >>*next
 

『静子の日常』 井上 荒野

評価:
井上 荒野
中央公論新社
¥ 1,470
(2009-07)

とるにたらない日常、ばかげたできごと――
チャーミングで痛快、75歳の静子さんとその家族の物語です。

フィットネスクラブのプールでは、すみれ色の水着に着替えてイルカ飛び。
新聞配達のバイトくんとは川べりでバーボンを酌みかわし、息子夫婦の微妙な空気に感づいてはさりげなくかき回して便宜をはかる。30年来避けてきた過去の恋人に会いに行ったりもしてしまう静子さんはとってもかわいらしくて元気なおばあちゃま。
でもけっして勝手きままに生きているわけではなくて、「息子夫婦の子育てにはいっさい口を挟まない」など、自分で決めたことを守りぬく意志の強さももち合わせている静子さんは、同居している家族との関係も良好なのです。

家から5分のところにあるバス停。この場所で静子さんは思います。
ここに来るバスに乗れば、たいていのところへ行ける。
「たいてい」どころじゃないわ、どこだって行けるわ、行きたいところにはどこだって行ける。
どこだって行ける。なんて力強いことばなのでしょう。そしてそれは、自分でえらんでここにいる、そのことの裏返しでもあるのだと思いました。
とるにたらない日常、ばかげたできごと。でも、帰るべき場所があることのシアワセ。
ちっぽけだけどしっかりとした日々の重みが感じられて、「いいな、こんなふうに私も年をかさねられたらな」なんて自分をとりまくたわいない日常もいとおしくなるような、そんな物語でした。
Author: ことり
国内あ行(井上 荒野) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -