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『逃れの森の魔女』 ドナ・ジョー・ナポリ、(訳)金原 瑞人、久慈 美貴

評価:
ドナ・ジョー ナポリ
青山出版社
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(2000-02)

幼いころ好きでよく読んでいた世界の童話たち。
作者のドナ・ジョー・ナポリさんは、そんな誰もが一度は耳にしたことのある童話からヒントをえた新感覚の物語をいくつも書かれている作家さんで、こちらはグリムの『ヘンゼルとグレーテル』をもとに書かれたお話です。
ひとつ視点を変えただけで、こんなふうにちがって見える・・・物語って、変幻自在の生き物みたい。童話のなかでは、森にまよい込んだヘンゼルとグレーテルを食べてしまおうとたくらむ悪い魔女。でも、魔女目線でつむがれたもうひとつの物語はひどく哀しく、ひどくせつないものでした。

容姿は醜いけれど、娘を愛する心やさしい産婆だったひとりの母親。彼女はいつしか、病気の源である悪魔をあやつって人びとの病を癒す女魔術師として活躍するようになります。けれど狡猾な悪魔の策略にひっかかり、美しいものに惑わされた彼女は魔女にされてしまいました。「人間の子どもを食え」という悪魔の声にあらがって、深い深い森へと逃げこみ、彼女がつくり上げたお菓子の家。ある日そこへ、ヘンゼルとグレーテルという愛らしい子どもたちが迷いこんできて――。
 
なぜ魔女は、深い森のなかにあまいあまいお菓子の家を建てたのでしょう。
なぜ魔女は、愚かしいほどいともたやすくグレーテルに殺されてしまうのでしょう。
孤独な魔女の心の葛藤に、誰の心にも悪魔はひそんでいて、なにかよからぬことを囁きかけている・・・そんな私自身も思い当たる甘い誘惑を重ね合わせていました。誰かを信じたい、信じられるものが欲しい・・・その魂が純粋であればあるほど、強ければ強いほど、心を侵食する悪魔の残忍さが際だつようです。

「きれいだと思うかい?」
「きれい? うん、そうかもしれない。でもきれいっていうより、けがれてないのよ。大事なのはそっちでしょ」

(原題『The Magic Circle』)
Author: ことり
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