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『龍宮』 川上 弘美

評価:
川上 弘美
文藝春秋
¥ 473
(2005-09-02)

女にはもてるのに人間界にはなじめなかった蛸、七世代前の先祖にひとめぼれする二百歳の女、曽孫の前に突如現れ、放浪の果てに自然神となった曽祖母、男の家から海へと帰る海馬――。
人と、人にあらざる聖なる異類との交情を、説話的な要素と日常のリアリティを融合させて描いた玉手箱のごとき8つの幻想譚。

ひとつひとつが闇の奥で艶めいて、奇異ではかなく湿度の高いお話の集まり。小さな頃に聴かせてもらった、うすら怖い童話のよう。
『北斎』、『龍宮』、『狐塚』、『荒神』、『鼹鼠(うごろもち)』、『轟』、『島崎』、『海馬』 。

くぐもった夢の奥、霧のように妖しくゆれる異形の翳。
いつとも知れずひっそりと扉がひらき、この世ならざるものたちが自在に行き交いはじめます。
心がしん・・、と静まりかえり、かたくなったりほどけたり。人も、そうでないものもみな一様に哀しみを背負いながら生きていて、彼らの邂逅の物語はそれぞれ立場はちがうけれど、どれもおなじ匂いがしました。
闇の底からぬるりと唐突にやってきては、また闇のなかへ消えるように去ってゆく。やわやわと捉えどころのない生き物たちが、読み終える頃にはこんなにもいとおしい存在になっている。・・・不思議。
私のお気に入りは、『荒神』、『鼹鼠』、『島崎』、『海馬』。
Author: ことり
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