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『奇術師の家』 魚住 陽子

評価:
魚住 陽子
朝日新聞社
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(1990-03)

心と体に不安定な要素を残しながら、奇術師・鬼頭との思い出に満ちた家に、30年ぶりに戻った母。靄のかかった奇妙な生活の中で、次第にその輪郭が鮮明になってくる母の過去に絡めとられてゆく鮎子。
第1回朝日新人文学賞受賞の表題作のほか、芥川賞候補となった「静かな家」など3編を収録。

雨の冷気、濃密なくちなしの匂い。
どんよりと蒸した季節に読むのにはぴったりの本でした。

『奇術師の家』、『静かな家』、『遠い庭』、『秋の棺』。どのお話も、まるで静物画のなかに入り込んでしまったかのようなひっそりとした佇まい。
何かにとらわれ心乱されている・・・そんな狂気じみた登場人物たちに呼応して、そこに存在するいくつもの調度品――紅茶茶碗やティーポット、青磁の壺、足踏みミシン、額に入れられた絵画までもが、なまめかしく息づいているようです。
家、部屋、画廊。女がひとりで守っている大切な場所。
どこにでもありそうな空間が、こんなふうに淋しく、時には妖しげに、雰囲気たっぷりの異空間に仕立て上げられていく。閉塞感と孤独に溺れてしまいそうになりながらも柔らかな泡がからだ全体にしみわたり、不思議と穏やかな心地がのこりました。
Author: ことり
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