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『学問』 山田 詠美

評価:
山田 詠美
新潮社
¥ 1,575
(2009-06-30)

東京から引っ越してきた仁美、リーダー格で人気者の心太、食いしん坊な無量、眠るのが生き甲斐の千穂。4人は、友情とも恋愛ともつかない、特別な絆で結ばれていた。一歩一歩、大人の世界に近づいていく彼らの毎日を彩る、生と性の輝き。そしてやがて訪れる、それぞれの人生の終り。高度成長期の海辺の街を舞台に、4人が過ごしたかけがえのない時間を、この上なく官能的な言葉で紡ぎ出す、渾身の傑作長篇。

少女とエロス。欲望と性。
結びつけたとたん、いやらしさばかりが一人歩きしてしまいそうなのに、このお話はむしろすこやかできらきらしています。
消えてしまいたいほどの羞恥心や黒くうず巻く嫉妬心、小さな胸を占領していた性にたいする好奇心や後ろめたさ・・・私にも思い当たるあの頃の複雑な感情が、そのつど的確な表現でつむぎ出されていくなかで、それらはすべて‘正しい’ことだと教えてくれているみたい。

自分のからだが内側から変わっていく、性のめざめ。
気持ちのいいことをもとめる本能。かくれてする「秘密の儀式」。
性の入り口に立ち、正しく欲情し、囚われ、学び、成長していく少女たち。
「私ねえ、欲望に忠実なの。愛弟子と言ってもいいね」
とてもあやうくてバランスをたもつのにせいいっぱい、そんな仁美と心太の関係は、まるで両手を広げてピアノ線の上をそろそろ歩きするこびとのようです。そんな均衡を破るかのように、からだの奥からほとばしる快楽の水に身をゆだね、仁美がたったひとりの男の面差しに弄ばれる描写に息をのみました。

ところどころにさし込まれた登場人物たちの死亡記事が、このきらきらとした日々が永遠などではなく、それぞれの死に向かって確実に失われていく日々だということをいやおうなく知らしめます。
ただでさえはかない青春がよりいっそうの輝きを放つ、脆くささやかな人生の物語。
Author: ことり
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