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『温かなお皿』〔再読〕 江國 香織

評価:
江國 香織,柳生 まち子
理論社
¥ 1,365
(1993-06)

食べること、が大好きな私は、‘おいしそうなごちそう’が出てくる本がそれはそれは大好きなのですが、なかでもこの『温かなお皿』は最たるもの。
そしてこの短編集は、まるごと新潮文庫の『つめたいよるに』に収録されているのだけれど、私がおうちで再読するのはもっぱら理論社からでているこの単行本だったりします。・・・柳生まち子さんの挿絵が楽しいから。
このちょっとなよっとした感じの挿絵はどのお話の雰囲気にもぴったりで(でっぷりしたローズィーのダンスや、身体に悪そうなたべものを食べる子どもたちの嬉しそうな顔、庭でテーブルをかこむ男運のない姉妹の表情などなど・・・)、ひらいた頁を前にニコニコしてしまうのです。

『朱塗りの三段重』、『ラプンツェルたち』、『子供たちの晩餐』、『晴れた空の下で』、『さくらんぼパイ』、『藤島さんの来る日』、『緑色のギンガムクロス』、『南ヶ原団地A号棟』、『ねぎを刻む』、『コスモスの咲く道』、『冬の日、防衛庁にて』、『とくべつな早朝』。日常のなにげないひとこまを、おいしそうなお料理にかさねて。
「とても美味しそう」という義母の言葉に、それは犬のお節だとしれっと言い放つ嫁『朱塗りの三段重』、ふだん禁じられているたべものを、両親の留守中に食べまくる幼いきょうだい『子供たちの晩餐』、おつゆの手毬麩に亡くした妻との時間を思い出す『晴れた空の下で』、恋人の本妻によびだされ、レストランで食事をする『冬の日、防衛庁にて』・・・どれも素敵で大好きなお話たち。
とりわけ心にしみるのは、どうしようもなく孤独が押しよせる夜を描いた『ねぎを刻む』です。淋しかったり、なにもかもいやになったり、そんな自分を持てあますとき、頭をからっぽにして夢中で単純作業をすると人間すこしは楽になるってこと、私も経験から知っている・・・だからこんなにも彼女の行為がしみてくるのでしょうか。
小さな食卓をととのえながら、私の孤独は私だけのものだ、と思った。
・・・みんなそうやって自分を立て直していくんだね。
せつない夜も嫌いな自分も、どうにかやり過ごして。
Author: ことり
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