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『不思議の国のアリス』〔再読〕 ルイス・キャロル、(訳)矢川 澄子

少女の頃から、私の大好きなお話のひとつです。
ワクワク・ドキドキがいっぱいの不思議の世界にまよい込んだなら、小さな悩みごとくらい綺麗さっぱり忘れられるの・・・。

「たいへんだ、たいへんだ、遅刻しそうだ!」
チョッキを着た慌てんぼうの白ウサギを追いかけて、少女アリスがとびこんだ兎穴。ぐん、ぐん、ぐうんとすべり落ちて始まる摩訶不思議な物語。
からだがのびたりちぢんだり、水ぎせるをくゆらせているイモムシや、いつまでも終わらないお茶会、にんまり笑っては現われたり消えたりするチェシャネコ、そしてハートの女王さまとトランプの兵士たち・・・アリスはつぎつぎへんてこりんなものたちに出くわして、狂気にみちた不思議の国にもてあそばれてしまうのです。
うまくいかない意思疎通、かみ合わない会話。やきもきするようなじれったい世界にひとりぽっちでほうり出されてしまったアリス・・・。でも読んでいて悲愴感を感じないのは、アリスがとっても前向きで、かしこく明るい女の子だからなのでしょうね。自分の目でしっかり世界を見、自分なりにちゃんと考える――その見方だとかひとり言がまた可笑しいのですが――そんなアリスが愛らしくてとても素敵、そう思いました。

ワクワク・ドキドキのへんてこりんな旅を終え、アリスがもとの世界に戻ってこられた時には安堵の気持ちでほうっと大きく息をつきます。いつのまにかアリスといっしょにふりまわされてしまった私はもうこんな冒険こりごりだわ、とも思います。でも時がたつとまた頁をめくって出かけたくなってしまうのだから、ほんと不思議・・・。
きらめく金色の午下り。微睡みのたまゆらに、たった一人の女の子アリス・リデルに捧げられた物語。
その語りかけるような言葉には幼い少女への柔らかなまなざしがあふれていて、とりわけ私は物語をしめくくる最後の一文がすごく、すごく好きです。

おしまいに姉さんは、この小さな妹が、このさきいちにんまえの大人になったときのことを想像してね。アリスはそんな歳になっても、子供の頃のすなおでやさしい心をずうっと保ちつづけるだろう。そしておさない子供たちをあつめては、いろいろとおもしろいお話をしてやって、子供たちは目をかがやかせてききいるだろう。――そのお話のなかには、昔むかしのふしぎの国の夢物語だって、きっとまじっているだろう。そうして話し手のアリス自身、子供たちといっしょになって、そのたあいない悲しみに胸いため、またむじゃきな喜びに胸ときめかせ、そうやって自分自身の子供の頃や、たのしかった夏の日々のことをなつかしく思いだすだろう――と、そんなふうに思うのだった。

(原題『ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND』)
Author: ことり
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