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『あたたかな パンのにおい』 今江 祥智、(絵)宇野 亜喜良

評価:
今江 祥智,宇野 亜喜良
偕成社
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(1978-12)

部屋じゅうにあま〜いこうばしさが立ちこめて、ふっくらほかほか焼きたてパンがでてくるお話、・・・かと思いきや、なんとパンそのものはどこにもでてこないのでした。

カメラに凝りはじめ、鳥の写真を撮るために森にこもってしまう兄ちゃんと、いつもほったらかしにされて淋しい妹のさなえ。
(兄ちゃんのいじわる!)
――おーこわこわ、その目はまるでハゲタカの目つき。
なんて、さっさとでかけてしまう兄ちゃんをきらいになってしまいそうだったある日のこと、兄ちゃんはさなえにおみやげをもってかえります。それはあの不思議な毛玉ケサランパサランみたいにたよりなく、ふわふわとしたちいさなフクロウのヒナ・・・さなえはヒナに「おにいちゃん」と名づけてそだて始めますが――・・・

今江さんのこまやかな心理描写にくわえ、宇野さんのモノトーンのイラストたちが、読み手のことをどんどん妖しげで不穏な世界に誘いこみます。
女性らしい丸みのまだないきゃしゃなからだつき、それなのにたっぷり艶やかな黒髪と、諦念や孤独がにじんだ少女のあの目。よからぬたくらみに満ち、冴えざえと光る切れ長の目は、まっすぐにこちらを見つめなにもかもをすいこんでしまいそう・・・。
思いがけず、遠い遠い幻想の国へといっきに解き放たれて終わる物語は、私の心にひやりとつめたいものをのこしていきました。
Author: ことり
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