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『秘密の花園』〔再読〕 バーネット、(訳)土屋 京子

評価:
バーネット
光文社
¥ 840
(2007-05-10)

先日、小川洋子さんの読書案内を読んでどうしても再読したくなった物語です。
児童文学として有名な『秘密の花園』ですが、今回私がえらんだのは原文にしたがい大人の読者に向けて新たに訳されたというこちらの本。少女の頃に大好きだった物語が、また違った大人の読み物としてもどってきたことが嬉しい。

主人公のメアリは、インドで両親をなくし、英国ヨークシャーの大きなお屋敷に住む叔父さんに引きとられます。やせっぽちで、いつもふきげんな仏頂面をしたかわいげのない少女・メアリ。でもそこで彼女はある事件以来閉ざされていた「秘密の花園」の鍵をみつけ、荒れた庭園の世話を始めます。動物とお話ができる少年・ディコンや病弱でわがままな従兄弟・コリンとの出逢い。少しずつよみがえる庭園・・・。
そして季節は春へとめぐり、お屋敷の周りのムーアには新緑のヒースやハリエニシダの花が咲きほこり、メアリと花園を中心に、魔法がかかったような素晴らしいできごとが起こっていくのです。
ディコンとメアリがまいたタネは、まるで妖精が手入れしたかと思うようにすくすくと育った。サテンのようにつややかなポピーの花がやさしい風に吹かれて無数に揺れ、はなやかな色をまきちらしている。(中略)
バラは毎日、毎時間、ぐんぐん育っていった。やわらかな葉が萌え出てみるみる増え、つぼみ――あの愛らしいつぼみ――がつき、小さかったつぼみが魔法にかかったようにふくらんでいって、やがてティーカップのように開いた花びらの先端がそりかえってやさしい香りがこぼれ、秘密の花園を満たしていく・・・。

ほんと言うと、この本を読み始めたとき、私の心はあまり良い状態ではありませんでした。でもそんな私にこのお話はそっとよりそい、メアリたちや「秘密の花園」がみるみる元気をとり戻すのを見ているだけで、ぺしゃんこだった心がふっくらやさしいものに変わっていくのが感じられたのです。
朝がくればかならずお日様はのぼるように、はだかんぼうの木々たちも春になれば新しい芽を吹くように、人間だってなんどでもよみがえる・・・お話からそんなメッセージがふんわりと伝わってきて、世界じゅうにみちているこの素敵な‘魔法’に私もかかってしまったみたい。
小学生の頃、祖父に庭のちいさな一角をもらってお花畑をつくったことをふと思い出しました。石でかこい、好きなお花を植えた私だけのリトル・ガーデン・・・。マンション暮らしのいま、土に触れることはなくなってしまったけれど、お部屋のなかに生花をたやさないことは心がけている私です。
心の奥の「秘密の花園」だけは、いつまでも、持ちつづけられるように。

(原題『THE SECRET GARDEN』)
Author: ことり
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