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『森に眠る魚』 角田 光代

評価:
角田 光代
双葉社
¥ 1,620
(2008-12-10)

東京・文教地区の街で出会った5人の母親。育児を通してしだいに心を許しあうが、小学校受験をきっかけにその関係性は変容していき・・・。
出口の見えない暗黒の森をさまよう母親たちの物語。

幼い子供をもつ母親の孤独とか傷み、嫉妬などの心の揺れが、すごみのある筆致であぶり出されていきます。‘小説’というよりも、隣近所にゴロゴロ転がっていそうなありがちな話という印象で、だからこそ、そのリアルさがたまらなく怖ろしい。
たとえば、宮部みゆきさんの本からふいに犯罪に巻き込まれてしまうこわさを感じるのなら、このお話から伝わってくるのはもっと身近な人たちのもつ毒。できれば目をそらしていたい、自分自身のなかのおぞましさ・・・。
繭子も千花も容子も瞳もかおりも、けっして悪い人ではありません。それどころか、それぞれにどこかしら共感のできる‘フツウの’女性たち。なのにふとしたタイミングでいじわるの芽が顔を出し、いままで心地よかった関係がばらばらにほどけていく。せまい世界で疑心暗鬼にかられていく・・・まるでお話ぜんたいが「あなたには、ほんとうの友だちがいるの?」 そんな問いかけを読み手へとぶつけるように。

だったらあの人たちと離れればいいのだと彼女はわかっている。人は人、自分は自分なのだから。なのにそうすることができない。なぜできないのか彼女にはわからない。(中略)
なぜ私を置いていくの。なぜ私を傷つけようとするの。必死に思いながら、離れるのではなく追いかけてしまう。

人間関係が壊れ始めると、心の声は幾重にもせめぎあい、壊れた日々の亀裂へと追いつめられていきます。
角田さんの、とくに女性にたいする厳しいまでのとがった描き方に、私は思わずため息まじりで読んでいました。でも勢いのあるストーリー展開と、「あなたには、ほんとうの友だちがいるの?」とこちらに突きつけるような文章の流れに、気がつくとミステリーを読んでいる時のようにお話にどっぷり浸っていたのです。
私はまだ子供がいませんが、子供をもつことにちょっぴり臆病になってしまいそう・・・あと、どうしてもとなりの芝生は青く見えちゃうものなのかな・・・この本を読みながらそんなことも思ってしまった私でした。
Author: ことり
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