<< 『3びきのこいぬ』 マーガレット・G・オットー、(絵)バーバラ・クーニー、(訳)あんどう のりこ*prev
『心と響き合う読書案内』 小川 洋子 >>*next
 

『愛の生活 森のメリュジーヌ』 金井 美恵子

書くということは、書かないということも含めて、
書くということである以上、もう逃れようもなく、
書くことは私の運命なのかもしれない。(『兎』)

誰もがもっている秘めやかな欲望、逃れられない本能が、研ぎ澄まされた感性で描かれていく短編集です。
金井さんのつむぎ出す言葉には魔物が棲んでいる・・そんな気がするのは私だけ? 
文章のはしばしからほとばしり、本を覆いつくす美しく濃密な色彩と空気。どの物語も一行目でいやおうなく遠い場所へとつれ去られ、すいこまれるようにむさぼり読んでしまいました。

煙草や手紙、ペンなどの生活の小物がなんともいえない存在感で息づき、そしてなにより食べ物の執拗な描写・・・透明な日常風景のディテイルが匂いたつ『愛の生活』は、これが19歳で書かれたなんてほとんど奇蹟のようだし、庭で飼っている兎を殺して食べる娘がやがて食べられる側の兎へと同化していく『兎』は、ただもう「凄い」のひと言。グロテスクな読み物は大のにがて、そんな私が吐き気がしそうなほどの狂気にずぶずぶ惹かれていくなんて、自分でもちょっと怖かったくらい・・・。

『愛の生活』、『夢の時間』、『森のメリュジーヌ』、『永遠の恋人』、『兎』、『母子像』、『黄金の街』、『空気男のはなし』、『アカシア騎士団』、『プラトン的恋愛』。
ひと月ほど前に古本屋さんで購入した本ですが、おびただしい数の本のなかから、この一冊をえらびとった自分の嗅覚が誇らしくなってしまうのです。
Author: ことり
国内か行(金井 美恵子) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -