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『未見坂』 堀江 敏幸

評価:
堀江 敏幸
新潮社
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(2008-10)

父が去ったあとの母と子の暮らし、プリンを焼きながら思い出すやさしかった義父のこと、あずけられた祖母の家で、あたりを薄く照らしていた小さな電球、子ども時代から三十数年、兄妹のように年を重ねてきた男女の、近いとも遠いとも計りかねる距離。惑いと諦観にゆれる人々の心を静謐な筆致で描き出す、名手による九の短篇。

私の大好きな本、『雪沼とその周辺』に連なる短編集です。
花びらがはらりと地面にたどり着いたような、やさしく消えいりそうな読後感。
地道に暮らす人びとのひっそりとした人生が織りなす物語だからこそ、こんなにも美しく、読み手の心にしみてくるのでしょうね。

吐息のようにはかないけれど、たしかな温度で伝わってくる思い出たち。
誰もがなにかを抱え、なにかにすがって生きている・・・そんな当たり前のことが郷愁の気配とともに伝わってきて、架空の町のはずなのに、いま私がいる‘ここ’とおなじ地続きにあるような錯覚に本気で陥ってしまいました。
『滑走路へ』、『苦い手』、『なつめ球』、『方向指示』、『戸の池一丁目』、『プリン』、『消毒液』、『未見坂』、『トンネルのおじさん』。読むほどに心がしん・・と鎮まる短編集。子ども目線のお話がいくつかあったのが印象的です。
Author: ことり
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