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『なつのひかり』 江國 香織

20歳から21歳になる直前の一週間に、栞(しおり)は不思議な世界に迷いこむ。
やどかりを探しにきた隣室の少年。うす昏い階段で、壁を背にくすくす笑う意地悪な双子の姉妹。置き手紙をのこして姿を消した美しい義姉。そして妻を探しに出た兄・幸裕は、‘裕幸’として見知らぬ女とともに現われた・・・。

道先案内人は、やどかりのナポレオン。
午後5時で止まった時間。ゆがんでいく世界。
刹那の恋、みつからない‘探し物’、遠い記憶――。

江國さんの小説のなかでも、とくにふわふわと掴みどころのないお話だから、肩の力をスコン、とぬいてお話に入りこむのがよさそう。
まばゆい日ざし、水槽みたいな部屋、夏草のむせるような空気・・・眩暈のするような夏の気配とシュールな切なさ。やどかりを追ううちに現実と幻想のはざまに導かれてしまう、というただでさえぼんやり奇妙な物語なのに、
順子さんの話をしよう。
こんなふうに唐突に、たびたび話題の転換が訪れるのです。
まるでひと晩にいくつも続けて夢をみたような、そんな感じ。
キャラメルの空き箱は電話代わりになるし、やどかりは銭湯で殻を脱ぐ。うふふふ、なんだか可笑しい。そして読み終えてなお、ぬぐい去れない謎の出来事たち。
栞の言葉を借りるなら、まったく「途方に暮れてしまう」のだけど、この不思議な空間にゆらゆらと身をゆだねること、それはとても気持ちのいいことなのでした。

「みんな探し物があるんだね。やどかりとか夫とかお兄さんとか」
「人生はくるくるまわるのね」
Author: ことり
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