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『魚神』 千早 茜

評価:
千早 茜
集英社
¥ 1,470
(2009-01-05)

生ぬるい水に囲まれた孤島。ここにはかつて、政府によって造られた一大遊廓があった。捨て子の姉弟、白亜とスケキヨ。白亜は廓に売られ、スケキヨは薬売りとして暗躍している。美貌の姉弟のたましいは、惹きあい、そして避けあう。ふたりが再び寄り添うとき、島にも変化が・・・。
第21回小説すばる新人賞受賞作。

よどんだ水の腐臭と、遊女たちのむせ返るような色香が立ちこめる幽玄な島。
本土からとり残され、うらぶれた島に息づく伝説と秩序。
ストーリーそのものよりも、その舞台設定にやられてしまう・・・なんて言ったら失礼でしょうか。
朽ちた祠の苔の絨毯、もの哀しい獏の遠吼え、月の冴えわたる音――島の闇夜に宿る生気が、死臭を内包した濃霧のひと粒ひと粒と溶けあって、肌にまとわりつくよう。白亜とスケキヨの狂おしいほどの情念に惹かれながら、美しくも怖ろしい妖艶な世界にずぶずぶと溺れました。

水面にゆらめく廓(くるわ)の灯も、目をそむけたくなるような血塗られた惨劇も、抱きすくめられた太い腕も、すべては密度の濃いまぼろし・・・?
読後ぼんやりと、現実と物語のあわいに身をまかせた私です。

「白亜、恐ろしいのと美しいのは僕の中では同じだよ。雷も嵐も雷魚も赤い血も。そういうものにしか僕の心は震えない。どちらかしかないとしたら、それは偽物だ。恐ろしさと美しさを兼ね備えているものにしか価値はないよ。僕はそう思っている。」
Author: ことり
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