<< 『熱気球』 ガブリエル・バンサン、(訳)もり ひさし*prev
『ブローチ』 内田 也哉子、(絵)渡邉 良重 >>*next
 

『或る少女の死まで 他二篇』 室生 犀星

繊細な感覚で日常の美を謳った大正詩壇の鬼才、室生犀星の自伝的三部作。古都金沢で数奇な星の下に寺の子として育った主人公は、詩への思いやみがたく上京する。詩人志望の青年の鬱屈した日々を彩る少女との交流をみずみずしく描いた表題作の他、『幼年時代』『性に眼覚める頃』を収録。

若く貧しい詩人の孤独な青春時代が、詩情あふれる筆致でつづられています。
のこされた教室で屋根瓦を数える寂寥感、嫁いだ姉の部屋にしのび込み募らせた姉への思い、紅い鼻緒の雪駄を出来心でぬすみ出したあとの後ろめたさ・・・ほろりと苦く伝わってくる若き日の追憶。しっとり柔らかな文章は、喧嘩のシーンでさえも繊細さを感じさせます。
表題作『或る少女の死まで』では、濁ってしまった自分の精神が、隣家の無垢な少女とふれあううち、少女のつやつやと澄みわたった透明な瞳に洗われ救われていく、というのが印象的でした。全編に女性への憧憬がにじんだ美しい小説集です。

私はこの敏感な少女の目を見た。この目こそ本当のものと嘘のものとを、直覚的に見る目だと思った。
私はふいと姉のことを考えた。やさしい魂につつまれた姉を思った。
Author: ことり
国内ま行(室生 犀星) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -