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『母の家で過ごした三日間』 フランソワ・ヴェイエルガンス、(訳)渋谷 豊

評価:
フランソワ ヴェイエルガンス
白水社
¥ 2,415
(2008-03)

前金に手をつけながら、もう何年も書きあぐねている作家フランソワ59歳。最愛のママンの家に足を向けられないまま、ひたすら過去の甘い追憶・文学談義・お色気話に現を抜かしているが、いつしか妄想が妄想を生み、彼の苦悶は幾重にも変奏されていく――脱線の名手による、ゴンクール賞受賞作。抱腹絶倒のマトリョーシカ小説。

その名前から、主人公の‘書けない作家’フランソワ・ヴェイエルグラッフが、作者・ヴェイエルガンスさんの分身であることがわかるのですが、彼の頭のなかからこれまた‘書けない作家’グラッフェンベルグが出現し、その彼が書いた小説『母の家で過ごした三日間』の主人公がヴェイエルスタインで・・・と出るわ出るわ、まさしくロシアのマトリョーシカみたいに分身たちがとび出してくる物語。
入れ子構造が現実から始まっていることにまずは笑ってしまうのだけど、いま私が読み終えたばかりのこの『母の家で過ごした三日間』が、じつはずいぶん前に発売予告がされたまま何年も書き上げられなかった、というからびっくりします。
妄想から妄想へと脱線していくめくるめく脳内ワールド――でも、この冗談のような小説がけっして冗談だけに終わらないのは、ママンへの深い深い愛情が最初と最後の章からせつなくあたたかく伝わってくるせい。

『母の家で過ごした三日間』を書きすすめながら彼が痛感するのは、今の自分と本当の自分との間の隔たりだった。まさか駆け出しの作家ではあるまいし、熟知した対象を語ることがそうでない対象を語ることより難しいのを知らないはずもなかったのだが。ヴェイエルスタインは果たして彼の代弁者たり得ているだろうか?
この作者、いい年をしてかなりの甘えんぼうではありますが、きっととても繊細な人なのでしょうね。ひとつの物語が小説家のなかで少しずつふくらみ形になっていく、そんな過程をかいま見た気がします。
ただちょっとお下劣な性的表現が多すぎて(私にとっては)、心から愉しめなかったというのが本音かな・・・。女性よりも、どちらかといえば男性向けと言えるのかも。

(原題『Trois jours chez ma mère』)
Author: ことり
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