<< 年間ベスト〔2008〕*prev
『薔薇をさがして・・・・』 今江 祥智、(絵)宇野 亜喜良 >>*next
 

『小さな男 * 静かな声』 吉田 篤弘

評価:
吉田 篤弘
マガジンハウス
¥ 1,998
(2008-11-20)

それがあんまり心地よい世界だったから、日だまりに寝そべる仔猫のようにまったりとのんびりと・・・長い時間をかけて読んでしまいました。
あらすじは?と訊かれても、ちょっと困っちゃうな・・・。そう、「膨大な日常の物語」とでも言っておこうかしら。デパートの壁の裏側、小さなラジオの向こう、誰も知ることのない仕事、どこかを駆けているかもしれない自転車――日常生活でのほんの小さなできごとや、ふと感じた疑問などがたくさんたくさん・・「塵もつもれば」というふうに重なっていくお話です。
小さな男の章と、静かな声の持ち主・静香さんの章が交互に進み、さらにその中で一人称と三人称のパートに分かれていて、ちょっぴり理屈っぽくなりがちな一人称のつぶやきを三人称が客観的にうまく補っているのが特徴的。そしてもちろん、小さな男の世界と静香さんの世界は、少しずつゆるやかにつながっていきます。

週のはじまりは月曜日か日曜日か。クリーム状なのになんで歯みがき粉というの? 新聞が、読み終えたとたん「新聞紙」になり下がるのはどうしてだろう?
そんなささやかな疑問たちにうずもれるようにして、人の‘記憶’に言及する場面があります。目障りな、毒々しいほどの赤い手帳を購入し、わざわざ書きとめなくてもよさそうなものまでメモしてしまう静香さん。ラジオのパーソナリティをしながらも、「たまたまラジオで話してるだけで、もし、そうじゃなかったとしてもたぶんこの赤い手帳を買っていた」という静香さん。私にも、分かる気がするの・・・誰に話すあてもなくても書きとめてしまうそんな気持ち・・・。
「さみしいですものね。今日、いまここでこうして二人で話したこととか、話しながら考えたこととか、そんなことがもしかして自分にとって残しておきたいものなのに」
本を一冊読むたびに、こうして文章をのこす私もきっとおなじだから。
思ったことのすべてを書きとめることなんてとてもできやしない。でも、だからこそ、感じたことのひとかけらでも、いいなと思った台詞のひと言でものこしておけたら。
誰の目にもとまることがなかったとしてもいいのかもしれません。ほんとうはね。


吉田篤弘さんの「ミニトーク&サイン会」に出かけました。
サイン本です↓
Author: ことり
国内や・ら・わ行(吉田 篤弘) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -