<< 『婚礼、葬礼、その他』 津村 記久子*prev
『こねこのぴっち』〔再読〕 ハンス・フィッシャー、(訳)石井 桃子 >>*next
 

『78』 吉田 篤弘

評価:
吉田 篤弘
小学館
¥ 1,680
(2005-12)
「78(ナナハチ)」という名のいっぷう変わったSP盤専門店をめぐる連作短編集。
あらゆることがでたらめに美しく響きあう、ちょっとレトロですてきな世界。
ハイザラ、バンシャク、「78」の店主、お隣のカナさん・・・彼らそれぞれが奏でるエピソードたちがすこしずつ不思議な連鎖をみせ、たったひとつの大きな物語をうかび上がらせていきます。
心がほっとくつろいで、なつかしいぬくもりに心がふんわり満たされる、そんな一方でじわっじわっとにじんでくる喪失感・・・それはきっとこの本が、いまはもうないものと、それでも‘ここ’に残っているものたちの物語だから。

それにしても、こうしてほんの少し思い出してみただけても、自分がいかに「いまはもうないもの」に取り囲まれていたか分かる。(中略)
完全に「ない」のなら、まだいい。
困惑させられるのは、そこに、「ない」ものの痕跡やら尻尾のようなものが残されていて、それがどうにも気になって仕方ない。人でも物でも、いったんこの世に姿かたちを現すと、なかなか簡単に消えてなくなることができないらしい。考えれば考えるほど哀しいが、哀しいという思いそのものの正体がそこにあるのかもしれない。

音楽とともに‘そのときの空気’までも録音されている、78回転のSPレコード。
時間はしずかに流れ、物語はゆっくりゆっくり終わりへと向かいます。なつかしい音楽となつかしい空気に心の耳をすませながら、そっと本をとじました。
Author: ことり
国内や・ら・わ行(吉田 篤弘) | permalink | - | -
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -