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『雪のひとひら』〔再読〕 ポール・ギャリコ、(訳)矢川 澄子

評価:
ポール ギャリコ
新潮社
¥ 460
(1997-11)
女の一生、と聞いてあなたが連想するのはどんな本?
たとえば江國香織さんは、ある本のなかで、「女の一生、というと、たぶんモーパッサン(あるいは林芙美子、有島武郎あたりか)を連想するのがまっとうというものなのだろうが、私は断然バーバラ・クーニーを連想する。」と書かれています。
私の場合はこの『雪のひとひら』がそう。初めて読んだのはもうずいぶん前だけど、以来ずっと、女の一生、というとまっさきに思いうかべてしまいます。

この世に生まれ、結婚し、子を育て、年老いて死ぬ・・・いわばどこにでもありそうな女の一生が、ある冬の日に空から舞いおりた雪のひとひらの生きざまを通して、じつに純粋に、こまやかに描かれていく物語。
いかなる理由あって、この身は生まれ、地上に送られ、よろこびかつ哀しみ、ある時は幸いを、ある時は憂いを味わったりしたのか。
誰にともなく問いかける雪のひとひらに、最後にかけられたやさしいことば・・・その甘美なささやきは、ほんとうに心強く、読む人をあたたかなものでみたしてくれるはず。

そしてこれは、矢川澄子さんの翻訳がすばらしく美しい本でもあります。どの場面のどの文章にも、これ以外ありえない、と思わせる珠玉の日本語がえらばれていて、そのあまりにゆき届いた的確さに心がふるえてしまうほど・・・。
翻訳された文章というのは、読んでいるとどうしても不自然な言いまわしに引っかかってしまうことも。でも、矢川さんの訳された文章に違和感を感じたことは一度だってないのです。これってすごいことだと思いませんか?

あとひと月もすると、ことしも雪の季節。
はるかな空の高みから、ふわふわ舞いおりてくる雪たちのなかに、いつも‘彼女’をみつけたくなってしまう私です。

(原題『SNOWFLAKE』)
Author: ことり
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