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『右岸』 辻 仁成

評価:
辻仁成
集英社
¥ 1,785
(2008-10-11)
『冷静と情熱のあいだ』以来、約10年ぶりの、辻仁成さん(『右岸』)と江國香織さん(『左岸』)によるコラボレーション小説。
ふたつのお話の主人公は、幼なじみの祖父江九と寺内茉莉。ふたりの50年にもおよぶ波乱にみちた人生を流れゆく川になぞらえ、『右岸』は九から、『左岸』は茉莉からの視点で物語がつむぎ出されていきます。

こちらは『右岸』、九の物語。
九は幼い頃から霊感が強く、‘スプーン曲げ少年’としてもてはやされ、それが彼のことを生きにくくし普通の生活から遠ざけます。
世間の注目を一身に浴びつつ、けれどどこか愚直で不器用な九。初恋の相手・茉莉にもうまく思いは伝えられず、周囲の人を幸せにできないことでずっと悩んでいく・・・そういう彼の迷い多き人生が描かれていきます。
少年時代に直面したお隣の惣ちゃんの死と、大好きだった父親の死。彼らの霊に見守られながら出た放浪の旅。やがてたどり着いたパリで一人の女性と愛し合う九もまた、たくさんの死を背負って生きていました。茉莉とはちがう川の岸辺で――。

『左岸』を読んだとき、それがあまりに完成されているものだから、もともと辻さんの小説がにがてな私は『右岸』を読むのを躊躇ってしまったのもほんとう。
実際、きわどい性欲描写や、空を飛べたりスーパーカーをうかばせたり・・・そんな九ちゃんの超能力も、後半はちょっとスゴすぎて着いていけなかった。でも。
「茉莉ちゃんはぼくの恋人でも、妻でもないのに、思えばいつも、ぼくの心の片隅にいつづけてくれました。」
向かいあっているわけでも、おなじ方向に向かっているわけでもないけれど、ある時ふと‘対岸’をみたときにはそこにちゃんといるような。九と茉莉はお互いがお互いの拠り所となって、長い長い人生の川をここまで流れてきたのかな・・・最後にそんなふうに思えたから、両方とも読んでよかったと思いました。

「なんで人は人ば好きになるとかいな」
「さびしかけんね。人は人ば求めるとたい」
Author: ことり
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