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『ずっとお城で暮らしてる』 シャーリイ・ジャクスン、(訳)市田 泉

あたしはメアリ・キャサリン(メリキャット)・ブラックウッド。
ほかの家族が殺されたこの屋敷で、毒殺魔と噂される姉のコンスタンス(コニー)、毒の影響で不自由な体となり狂気に冒されつつある叔父のジュリアン、それから猫のジョナスといっしょに暮らしている――。
悪意にみちた外界に背を向け、幸せな日々を過ごす彼女たち。そんなブラックウッド家に、ある日突然いままで連絡のなかった従兄のチャールズが訪れ、美しく病める箱庭世界が大きく揺らいでゆくゴシック・ロマン。

自分が内側から、よくないものにじわじわ侵食されていくようなうすら寒い感覚。
理性や価値観までもが蝕まれていく、そんな静かな恐怖を感じます。
語り手のメリキャット目線で読んでいると、どうやら彼女がまともではないらしいことが分かってきて――思考が幼く、奇妙な空想(被害妄想?)のなかに棲んでいる――物語の世界がぐにゃりと歪みはじめます。まるでこちらを嘲笑っているみたいに。

 メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん
 とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット

毒殺魔のいるブラックウッド家に敵意をいだく村人たちと、邪悪なものを抱えながら独自のルールに従い静かに暮らしていく姉妹。空想のなかで遊ぶ夢みごこちのような不確かな世界は、でもだからこそ、知らず知らずのうちに私の意識下へと潜りこんでくる甘い狂気が怖かった・・・。
メリキャットに言わせれば、きっと私も「かわいそうな、知らない人たち」の一人。
美しく閉ざされた‘お城’に籠もりきって、これからもこの我儘で残酷で邪悪な姉妹は穏やかに暮らすのでしょう。ずっとずっと、永遠に。
 

「あたしたち、とっても幸せね」


(原題『We Have Always Lived in the Castle』)

Author: ことり
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