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『まっくら、奇妙にしずか』 アイナール・トゥルコウスキィ、(訳)鈴木 仁子

評価:
アイナール トゥルコウスキィ
河出書房新社
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(2008-07-12)

いつの話なのか、どこの話なのか。
いつかどこかで起こりそうな、雲をつかむような話。
不思議な男は、きょうもどこかで漁りをつづけている――ブラティスラヴァ世界絵本原画展2007年グランプリ受賞作の素晴らしい絵本。

この精緻な精緻なモノクロームのイラストたちが、たった1本のシャープペンシルで描かれている、そのことにまず目をみはりました。
たった1本のシャーペンで、3年間をかけて。消費された芯はなんと400本。気の遠くなるほどの時間と労力が費やされた、ほとんど狂気ともいうべき仕事。
目の前にひろがる機械じかけの奇妙な世界――雲をとらえる装置、不思議な顔した魚、洋服のしわのひとつひとつまで、じっくりと見入ってしまいます。白黒の濃淡だけで、金属の質感や風の匂い、木々の緑までも感じられるなんて。

どこからともなくやってきた不思議な男を、双眼鏡でのぞき見てはひそひそと噂しあう住人たち。
じりじりとにじり寄る不穏な影。人びとの愚かでみにくい欲深さ。
そんな恐るべき「まっくら」にシャーペン1本で対峙していた背中を思うと、さらに深い孤独の闇に吸いこまれてゆきそうです。大人の絵本。

(原題『ES WAR FINSTER UND MERKWÜRDIG STILL』)
Author: ことり
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