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『七つの人形の恋物語』 ポール・ギャリコ、(訳)矢川 澄子

評価:
ポール・ギャリコ
角川グループパブリッシング
¥ 540
(2008-08-23)

虚と実、仮面と素顔とが第一幕で隣り合う人形芝居の舞台の内と外で演じられる、キャプテン・コックとムーシュの波乱に富んだ愛の物語『七つの恋の物語』。
代表作『スノーグース』も収録、ギャリコファン必携の一冊。

ほうう・・・ため息。読み終えて、しばしぼんやりと放心してしまいました。
物語は、生きる望みをうしない、セーヌに身を投げようとしている女性・ムーシュに、七つの人形がかわるがわる語りかけてくるところから始まります。
個性ゆたかな七つの人形となかよくなって、謎めいた一座の仲間入りをすることになるムーシュ。七つの人形を操っているのは、じつはキャプテン・コックという残忍な男なのですが、とても無垢なムーシュは目の前にいる人形をそのままの人格として受け入れてしまえます。やがてムーシュと人形たちの舞台は大評判をよび・・・。

自分がもち得なかった純粋さをもったムーシュを汚したくて、無理やりに身体をうばい、夜ごとムーシュに屈辱を与えるキャプテン・コック。そんな彼は憎むべき存在だけど、どんな夜も、明けてみれば七つの人形たちはムーシュに生きる喜びをよみがえらせ、様々な歌や物語をつむいで彼女との愛を深めていきます。
七つの人形――にんじんさん、ジジ、巨人アリ、レイナルド、デュクロ博士、マダム・ミュシュカ、ムッシュ・ニコラ――の個性はどれも、キャプテン・コックが本来もっている‘魂’なのですよね。そしてラストのシーン・・・心が震えて、思わず泣いてしまった私です。荒々しいふるまいとゆがんだ欲望で表現されてしまった、けれどこれはひとりの人を長いあいだ愛し続けてきた、まぎれもない愛の物語だと思いました。

「あなた、すごくおもしろいんですのよ。その娘はいろんな人形とおしゃべりするんですけど、その陰には一人の男がいるわけでしょ。それがまた幻の男で、だれも姿を見たことがないんですよ。きっと気違いみたいにその娘を愛してるんでしょうね。」

(原題『Love of Seven Dolls』)
Author: ことり
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