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『海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選』 ジュール・シュペルヴィエル、(訳)綱島 寿秀

海にうかぶ町に暮らす一人の少女、イエス誕生に立ちあった牛と驢馬、羊の息子を3匹つれて歩く寡婦・・・読むほどに透きとおっていく遥かな短篇集。

20ものお話がひしめきあっているこの本は、どれもその入り口で、想像もしなかった奇妙な世界にいっきに誘いこまれてしまいます。
もともとは詩人だというジュール・シュペルヴィエル。そんな彼がつむぎ出す物語は詩的でありながらも、とても幻想的。ラスト数行の鮮やかな拡がりにどきりとさせられたり、そのくせふわふわと覚束ない、哀しみでも苦しみでもないようなあいまいな切なさが心にのこる、そんなお話たちがたくさん収められています。
私が好きなお話は、その独特の雰囲気がまるで一枚の美しい絵になりそうな『海の上の少女』と、上質の散文詩を思わせる小さなお話『牛乳のお椀』。
とくべつ印象的だったのは、『セーヌから来た名なし嬢』でしょうか。
セーヌ川にとび込んだ19才の娘の溺死体は、屍体のあがらなかった人びとが住みついた海の底の世界に流れつきます。海底の世界にはその世界なりのあやしげな秩序があって――。
主人公が溺死体、だなんて思わずギョっとするような設定ですが、セーヌ川を流れていく描写など、ほんと素晴らしくて引き込まれてしまいました。<大濡れねずみ>や<純真さん>などでてくる人のちょっと変わった名前たちも好き。

どちらかといえば、頭で考えるよりも雰囲気を味わったりゆっくり心で感じたい、そんな読書がお好きな方に。
夢のようにはかない短篇集は、美しく端正な装丁も素敵です。
Author: ことり
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