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『ブラフマンの埋葬』 小川 洋子

評価:
小川 洋子
講談社
¥ 1,404
(2004-04-13)

夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。
オリーブ林、古代墓地、不思議な埋葬の習慣――日本ではないどこか遠い異国の村を舞台に、ブラフマンと<創作者の家>の管理人「僕」との交流を描く、苦くせつないひと夏の物語。

チョコレート色したつぶらな瞳で僕をみつめる小動物のブラフマン。
黒いボタンのような鼻をひくひくさせるブラフマン。
やわらかな毛をまとい、四肢がみじかく、しっぽがしっかりしているブラフマン。
足には肉球と、そのあいだに水かきをこっそり隠しているブラフマン。
食べることと眠ること、そして泉で泳ぐのが大好きなブラフマン・・・。

ブラフマンが本当にかわいくイキイキと描かれていて、私はすぐにとりこになってしまいました。たとえば、ブラフマンがトイレ用の段ボールを食いちぎり、お部屋をめちゃめちゃにしているのが「僕」に見つかったときのこんな一場面。
「駄目じゃないか・・・」僕がつぶやくと、両手に挟んだものを足元にぽとりと落とし、同情に満ちた表情で小首を傾げた。
「私にもどうしてこんなふうになってしまったのか、さっぱり分かりません」そう嘆いているかのようだった。
もうブラフマンったら、かわいすぎます。
抱き上げるとあたたかいんだろうな。ふくふくと愛くるしいんだろうな。そんなふうに想像し、ニコニコしながら読み進めていきました。タイトルからブラフマンが「埋葬」に向かっていくお話だということは分かっていたはずなのに・・・。
でもこのお話、確かにそこかしこに死の香りを漂わせてはいるけれど、それはけっして忌み嫌うものではなく、しずかに、すぐそばにあるものとして扱われている感じがします。それが小川さんの美しい文章と重なりあい、林や泉や草原の広がる情景に溶けあって、こんなにも芸術的なニュアンスをかもすのでしょうね。

ブラフマンは最後まで‘何’だったのか明かされません。
私はカワウソかビーバーかしら?と考えをめぐらせたりもしたのですが、もしかしたら彼は空想上の生き物・・・ブラフマンは「ブラフマン」でしかないのかも。
それはまさに、「謎」なのです。
Author: ことり
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