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『波打ち際の蛍』 島本 理生

評価:
島本 理生
角川グループパブリッシング
¥ 1,365
(2008-07-31)

川本麻由はかつての恋人によるDVで心に傷を負い、生きることに臆病になっていた。ある日通院先で植村蛍に出会い、次第に惹かれてゆく。もっと近づきたいのに、身体はそれを拒絶する。フラッシュバックする恐怖と、相反してどうしようもなく動いてしまう心。そんな麻由を受け止めようとする蛍だが――。
どこまでもどこまでも不器用で痛く、そして眼が眩むほどスイートな、島本印の新しい恋愛小説。

やっと治りかけたかさぶたを自分の手で力ずくではぎ取ってしまうような痛々しさと、恋愛の始まりのドキドキとした不安やときめき。その両方が感じられる本。
一度こわれてしまった心・・・心にうけた傷は時が経っても何度も何度もよみがえり、その人を苦しめます。目の前の素敵な恋になかなか踏みだせない麻由。蛍に触れたい、触れられたい、抱きしめてほしい。なのに過去の心の傷はそれをこばみ、赦してはくれない・・・そのどうしようもなさ、もどかしさがとてもリアルに伝わってきて、私の心はせつなさでいっぱいになってしまいました。

でも、重いテーマを扱っていながら、この小説がそれほど暗く沈鬱に終わらないのは、どんなに絶望的な状況においてもかならず主人公をあたたかく見守り、手を差しのべてくれる人がいるから。
ガラス細工のように脆く、ぐらぐらと不安定な麻由ですが、そんな彼女を大切に思いじっくり向き合ってくれる蛍がいます。紗衣子さんやさとる君など、ほかにもたくさんのステキな人たちがいます。
未来に明かりが見出せない時ほど、ちょっとした優しさや思いやりが大きなともしびになって人の心を救ってくれる・・・読み終えたばかりの私の胸は、正直まだ余韻でひりひり痛いけど、明るいその後を思い描けるお話はやはりいいなあと思いました。
Author: ことり
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