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『ただならぬ午睡』 (選)江國 香織

江國香織さんセレクトの、恋愛小説アンソロジー。
足を踏み入れたとたん、まるでたくさんの絵の具がとろけたマーブルのような世界に、くらくらと翻弄されてしまいました。

 

それはたしかに絵のように美しい場所だった。水色の空、繊細な葉が影をおとす並木道、あかるい玉子色の壁際に、犬が一匹ねそべっていた。日なたと日陰のコントラストの強さに、現実感が歪むのがわかった。

江國さんの『十日間の死』にあった文章は、まさにこの短編集――現実がリアリティを失うほどの、まばゆくただならぬ午睡――をあらわしているみたい。光の底をたゆたうような、甘い睡魔の誘惑。
とりわけ遠い場所までつれて行かれたお話は、河野多惠子さんの『朱験』。妖しくて、ぬめぬめとエロティックで・・・、この魅力はきっと20代の私には分からなかった。そういえば、どのお話もある程度年齢をかさねなければ分からない種類の良さがあるのかもしれません。
きらきらとした恋のはじまりのような恋愛小説ではなくて、どちらかといえば恋の終わり・・おぞましくも美しい男と女の物語ばかり。これらの小説を、ジョージア・オキーフの絵にたとえる江國さんの感性がたまらなく好き・・・。白々とまぶしく、りっぱな白骨になりそうな「すばらしく野蛮な」短編集です。

『謎』 吉行 淳之介
『朱験』 河野 多惠子
『ホテル・ダンディライオン』 安西 水丸
『十日間の死』 江國 香織
『夏の情婦』 佐藤 正午
『シャトー・マルゴー』 村上 龍
『私は生きる』 平林 たい子
『かわいい女』 アントン・チェーホフ、(訳)小笠原 豊樹

Author: ことり
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