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『歌行燈・高野聖』 泉 鏡花

『高野聖』、『女客』、『国貞えがく』、『売色鴨南蛮』、『歌行燈』の5編。
いまから100年ほども前に書かれたお話たち。こちらは新かな遣いでしたが、独特の旋律や五感すべてに訴えかけてくる豊かな言葉・・・その魅力はじゅうぶん伝わってきます。
漢字えらびやその読ませ方など細部にまでこだわり、「言霊」というのかしら、なにやら霊気すら感じてしまう著者の文章。とくに心がざわついたのは『高野聖』のお話。

『高野聖』
高野山に籍をおく一人の僧が、旅籠の寝床で若者に語り聞かせた「山深い峠の孤家(ひとつや)で出逢った美女」の物語。
僧をもてなしてくれた匂うばかりの妖艶な婦人(おんな)、その正体は淫心を抱いて近づく男をけだものにかえてしまうという世にも恐ろしい女怪だった。
そうとは知らず、僧は水量の豊かな谷川で婦人に身体を洗ってもらうが・・・。
「その心地の得もいわれなさで、眠気がさしたでもあるまいが、うとうとする様子で、疵の痛みがなくなって気が遠くなって、ひたと附ついている婦人の身体で、私は花びらの中へ包まれたような工合。(中略)
その上、山の気か、女の香(におい)か、ほんのりと佳い薫がする、私は背後(うしろ)でつく息じゃろうと思った」
夏の暑さと水のつめたさ、婦人の手のぬくもり、肌にかかる吐息のあまやかな薫・・・美しい日本語に誘われとっぷりとひたる幽玄でエロティックな世界。
背すじがひんやりしてしまうこんなお話、真夏の夜の読書にいかがですか?
Author: ことり
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