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『美しい夏』 パヴェーゼ、(訳)河島 英昭

評価:
パヴェーゼ
岩波書店
¥ 605
(2006-10-17)

そのタイトルから、なんとなくきらきらしたお話を思いうかべていたのですが、実際に読んでみるとどんよりと重たくてグレイッシュな印象。
ものうい空気の色が頁をめくる指先すら染めていくようです。
ファシズム体制下のイタリア。都会で働く3歳違いのジーニアとアメーリア、二人の女性の物語は、1950年のストレーガ賞(イタリア最高の文学賞)受賞作。

すべてを経験し、ちょっぴり娼婦っぽいイメージのある19歳のアメーリアに、ときに反発しながらもあこがれている16歳のジーニア。そして、もうそんな夏の時代を通過してしまったアメーリアにとってジーニアは過去の自分のような存在で、彼女もまた無垢なジーニアに複雑な感情を抱いているみたい。
お話は、軍隊に入っている画家・グィードに恋心を抱き、おとなへの道を歩みはじめるジーニアの姿を描きながら進んでいきます。うす昏いダンスホール、あやしげなモデル業、葡萄酒やたばこの味、そして愛の行為・・・まるでアメーリアの「美しい夏」の軌跡をたどるように。
あのころはいつもお祭りだった。

うつろいゆく季節と、いまでは記憶のなかにしかない「あのころ」。
女たちの孤独な青春、頽廃的なアトリエの交友関係――第二次世界大戦中の殺伐とした世相を背景につむがれていく、切なくてほろ苦いこれは喪失の物語。
10代の少女にとって、3歳の差というのはとてつもなく大きいもの。女性の方だったら、ジーニアとアメーリア、どちらの気持ちも分かるんじゃないかしら。
・・・だって女には、‘処女’と‘娼婦’が同居しているものだから。

(原題『La bella estate』)
Author: ことり
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