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『モモ』〔再読〕 ミヒャエル・エンデ、(訳)大島 かおり

これまで何度となく読み返した『モモ』の本。たくさんの本たちとの出逢いのなかでも『モモ』は私にとって特別な本のひとつです。
初めて読んだのは小学校の高学年で、もちろんそのときはただ‘ふしぎな冒険譚’として読んでいたはず。でもおとなになってから読むと、モモの存在は私たちおとなにこそ必要なのだと思わされるのです。これほどファンタスティックで、風刺に富み、心をみたしてくれる物語を、ほかに思いつかない。

ある日町はずれの円形劇場に住みついた女の子。町の人たちはみんなモモのことを好きになりました。彼女に話を聞いてもらうと、すばらしいアイデアがうかんだり、希望や明るさがわいてくるからです。
けれど、灰色の時間どろぼうがやってきてから人びとは急にせかせかいそがしくなります。遊んだり、お茶を味わったり、のんびり風に吹かれたりすることはすべて時間の無駄遣いだとふきこまれ、「時間の節約こそが幸福への道」と人びとの心がすさんでいくのです。
みんなの時間をとりかえそうと、モモは灰色の男たちに立ち向かいますが・・・?

時間とはすなわち生活なのです。そして生活は人間の心の中にあるものなのです。人間が時間を節約すればするほど、生活がやせほそって、なくなってしまうのです。

私は時たま、時間どろぼうに私の時間がぬすまれてしまったのかしらと思う瞬間があります。ああ時間がない、あれもしなきゃ、これもしなくちゃ、なんてアタフタしてるとき心はささくれ、生活はやせほそっているのでしょうね。
そんなとき、私はこの『モモ』にあった道路掃除夫ベッポの言葉を思いうかべます。
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。そういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
時間とは動いていくもの。一種の音楽、耳をすませば流れているもの――。
何年かに一度読み返し、私は耳をすませます。ぬすまれた時間をとりかえすため、『モモ』はいつも私の本棚にあります。

(原題『MOMO』)
Author: ことり
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