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『燃えるスカートの少女』 エイミー・ベンダー、(訳)管 啓次郎

不可思議で、奇妙で、痛々しく、哀しみに満たされた、これは現実をかたる物語たち――
失われ、取り戻される希望、ぎこちなく、やり場のない欲望、慰めのエクスタシー、寂しさと隣り合わせの優しさ、この世界のあらゆることの、儚さ、哀しさ、愛しさ。少女たちが繰り広げるそれらの感情が、物語を超え、現実の世界に突き刺さる。本処女作にして強烈な才能を発揮し、全米書評家たちをうならせ絶賛された、珠玉の傑作短編集。

この本のもつ不可思議な魅力をいったいどうやってお伝えすればよいのでしょうか。
過去のこと、家族のこと・・・しずかな視点で描かれたお話は、どれも刺すように哀しくて、抱きしめたくなるほどに愛おしいものばかり。
銀の雨にうたれながら、温かいのは自分の心臓だけではないかと疑うような・・・
夢のなかで食べたアリスのきのこなのに、舌に独特の風味が残っているような・・・
そんな心細くはかない肌感覚が色とりどりに押しよせてくるふしぎな本。

心にのこったのは、恋人が逆進化していくお話(『思い出す人』)と、お父さんのおなかに大きな穴があいてしまうお話(『マジパン』)と、火の手をもつ女の子と氷の手をもつ女の子のお話(『癒す人』)。そんな風変わりなストーリーたちだけど、みたされない気持ちとそれを埋めようとする欲望が、痛みや淋しさにつながっていく様子に引き込まれます。
奇抜なのに哀しくて、野蛮なのに繊細・・・。そしてなにより描かれている少女たちの冷静なこと。これほど不可解な世界観をするりと受けとめてしまえるのは、ひょっとして彼女たちの冷静さのせい、なのかしら。
崩れているようにみえて、完ぺきに統御された美しさ。
このような物語は、よそではなかなか味わえないかも。

(原題『The Girl in the Flammable Skirt』)
Author: ことり
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