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『そのぬくもりはきえない』 岩瀬 成子

小学4年生の波は、いつも‘何かちがう’という気持ちを母親や友だちに伝えられずにいる女の子。近所のおばあさんの飼い犬を散歩させる仕事を頼まれた波は、その家の2階でそこにいるはずのない朝夫という男の子と出会う。
少女の心の成長を、静かに描いた物語。

うまく表に出せなくてちぢこまってしまう気持ちだとか、大切にしている彼女だけが感じる宝物のような場所。まわりのみんなと比べて落ち込んでしまうそんな経験・・・。なんだか、私には‘心当たり’のあるお話だったのです。
にがてな習い事、となり町の進学塾。両親はいつもやさしく導いてくれるのに、彼らの期待にうまくそえず、ついていけなくて、どうしようもなく心がしんどかったあの頃・・。
「わかってる、波の気持ちはわかってる。いやだなあって思うことあるよね」とお母さんは言う。そして「わかってるけど、でもね」とことばはつづく。波をつつみこむように、お母さんは話しかける。・・・人生にはいろんなことがあるんだから、いやなことに負けてちゃだめよ。にげちゃだめ。がんばらなきゃ。お母さんのことばは波をぐるぐる巻きにする。
お母さんは正しい。正しいことを伝えているだけ。でも正しいことって、時に人を追いつめてしまうのですよね。
私がもしも子育て中だったなら、きっとすごく複雑な気持ちになっただろうな・・・。

ある日、ちがう時間を生きる朝夫くんに出会い、いっしょに過ごすうちに少しずつ変わっていく波。その出会いは偶然かもしれないけれど、波にとって起こるべくして起こったこと、そんな気がしています。
このあとにつづく波の10代がどうかどうか、生きやすいものでありますように。
Author: ことり
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