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『ひな菊の人生』 吉本 ばなな

たて笛、林、ダリアとひな菊の幼い魂の約束――。
ひな菊25歳。生まれたときから父はなく、母も幼くして交通事故で亡くした。今は高春のところに居候して、おじさん夫婦の営む店でやきそばを焼く毎日だ。幼いころ別れた親友ダリアを今も思い出しながら・・・。

よくいっしょに添い寝をしてくれた愛らしい母親も、たて笛を吹くと林のなかを駆けて会いにきてくれたダリアも、いまはもういない。
この本を読んでいると、私たちは普通に生きていることが当たり前なのではなくて、こうして無造作に笑っていられることがじつは奇蹟で、なにかとても優しくて美しい決まりごとにのっとって生きている・・・そんなことを思い知らされてしまいます。
言葉のひとつひとつがスコーンと心にひびいて、不思議な夢や感覚も日常にとけこむようにして受け入れ、枯れ葉の匂い、人肌にしみ込んだ香水の香り、やきそばの湯気・・・そんなかたちなきものたちまでもが、くっきりと輪郭をもって届くのです。

「一回でも会うと、そのときにひとつの思い出というか、空間ができるでしょう。それはずっと生きている空間で、会わなければこの世に全くなかったもので、全く人間どうしが無から作ったものだから。」
誰かが誰かと出会って生まれたそのときの空間は、誰も――天や運命でさえも奪うことは永遠にできない、そんなふうに語る高春の言葉がとても印象的。
奈良美智さんのちょっと陰のある可愛い挿絵が、この本のフワフワとしたきびしさにぴったりと合っています。
Author: ことり
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