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『桜の森の満開の下』 坂口 安吾

ふんわりと淡いピンクが風にそよいで、髪に肩にはらりと降りかかる花びらたち・・・満開の桜に目をうばわれる、そんな季節に読み終えた本。
『小さな部屋』、『禅僧』、『閑山』、『紫大納言』、『露の答』、『桜の森の満開の下』、『土の中からの話』、『二流の人』、『家康』、『道鏡』、『夜長姫と耳男(ミミオ)』、『梟雄』、『花咲ける石』。13編を収録した短編集です。
『夜長姫と耳男』など忘れられないお話は他にもありましたが、圧巻なのはやはり表題作。咲き乱れる桜の森を背景に、山賊の男と彼を虜にする美しい女の、背すじがしんと冷えるような情愛の関係が静謐な文章で紡がれていきます。

日本人を惹きつけてやまない、桜の花の魅力と魔力。
満開の桜はたしかに美しいのだけれど、その奥には怖さをも秘めているという事実。
人の生首で戯れる女と幻想的な桜を対比させた物語は、なんとなく梶井基次郎さんの短編小説の出だしの一文「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」を思わせゾクゾクしました。
頭のなかに映像をうかべながら読み進んでいくと、その光景が美しければ美しいほど、そして、そこに妖艶な匂いが濃厚になればなるほど怖い世界につながっていく、そんなちょっとあぶない美しさに酔いしれてしまいそうです。

「花の下は涯(はて)がないからだよ」
物語の終わりに、私たちはただぼんやりと虚空をみつめるばかりなのです。
Author: ことり
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