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『苺をつぶしながら』 田辺 聖子

評価:
田辺 聖子
講談社
¥ 1,575
(2007-08-02)

言い寄る』、『私的生活』につづく三部作最終巻は、35歳になった乃里子が結婚生活から「出所」して謳歌する‘一人の人生’のお話です。

いまの自分が一ばんきれい、昔のことはみな「あの世のこと」――乃里子さんはすっかり大人びて、ブリジット・バルドーをお手本に、のら猫みたいな「一人住みの幸福」をしっとり奔放に生きています。美しい女友達とごはんを食べる時間も、軽井沢のホテルで猫足のバスタブにゆっくり身体を沈める時間も、私にとっては恋、と言いきるそんな彼女が好き。
二人で暮らすことのよさを一度味わったからこそしみる、気ままな暮らし。たくさんの友人たちと、充実した仕事。けれどそんななかで気づかされる人生のいろんなこと、いろんな変化・・・。別れた夫・剛のぶきっちょなやさしさを読みとりながら‘すべてのものは変化していく’そのことをあらためて思います。
あのう、寝る、ということは、ですね、私の場合(というか、女の場合というか)ともかく、優しい声が出せるから寝られるのだ。やさしい声を出すキカイは、一たんこわれたらもう修繕できなくなってしまう。
いつも明るくあっけらかんとして、悩みなど蹴ちらしてきたように見える乃理子さんが‘一人の人生’の楽しさの裏側にぴったり貼り合わされたものを目の当たりにする終盤。思いのたけがほとばしるような文章では、ぞっとするような淋しさがこみ上げて涙がこぼれてしまったほど。でもそこは田辺さん、ラストはとてもステキですよ。

ふたりでいる不自由、ひとりでいる気楽さ。
ふたりでいる愉しさ、ひとりでいる孤独。
あまくて酸っぱい苺みたいな三部作。これぞ「日本の恋愛小説の底力」!
Author: ことり
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