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『私的生活』 田辺 聖子

評価:
田辺 聖子
講談社
¥ 1,575
(2007-07-18)

三部作の2巻め、『言い寄る』のその後です。
乃里子さんが気の合うお金持ちの剛と結婚し、海を見下ろす高級マンションで誰もが羨む上流暮らしを始めて3年・・・剛にからだじゅう揉みくちゃにされる楽しい生活も、剛の束縛や一族との交流にだんだん息ぐるしくなっていきます。

田辺さんという人は、どうしてこれほど微妙な女ごころを文章にできるのかしら・・・。これってもしかして男性には分かりっこないのかも。けれど女性なら、誰もが分かりすぎるくらいに分かってしまうはず。
おどろきの的確さで、読むたびなっとくのフレーズたち。たとえば、
「良質の機智(エスプリ)は、沈黙にあることもある。」
「昔、寝たことがあるというだけで、なれなれしくするような男は屑である。」
「女と、いつまでも仲よくしようとすると、追いつめてはいけない。」
昔の男に出会ったときの心の内、一寸先は闇な男女の仲・・そのイチイチにあきれるほど共感し、ラストでは思わず泣いてしまったのです。けれど田辺さんの手にかかると、どんなせつないお話もぽっかりとした明るさが宿るから不思議です。
それに、乃里子さんは(それは田辺さんは、ということだけど)自分の好きなもの、きらいなものがとてもハッキリしているのですよね。○○って大好き、なんていう記述がたくさんあって、女の可愛らしさがほわっほわっとにじみ出ている感じが読み手にも気持ちよく伝わってきます。
物語はけっこうシビア。それをこんなにもユーモアたっぷりに描けるのは、田辺さんだからこそ。「ユーモア」・・そこに彼女の美学、品格を見るようです。

私だけじゃない。女はみんな、外から見えるものは氷山の一角だゾ。
だから、突如、妻に蒸発されたり、浮気されたりした夫は、アッとおどろき、髪をかき毮って、「何が何やらわかりまへん」と身悶えしたり、テレビに出て、「帰ってくれ、たのむ。悪い所は改める。この通りだ」と手を合せておがみ、男涙にくれているのだ。
それはみな、それまで女の、ある種のやさしみから、(これはあの人向きの話だから、これは言ってあげよう)とか、(これはいっても仕方なかんべえ)と類別しているのである。私は、それを女のあきらめだとも思うし、いたわりだとも思われる。


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Author: ことり
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