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『森かげの家』 マーティン・ウォデル、(絵)アンジェラ・バレット、(訳)前沢 浩子

評価:
マーティン ウォデル
PARCO出版局
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(1992-03)

小道のおくの小さな家。
ひとりぼっちで住むブルーノーは、いっしょにくらしてくれる木の人形を三つ作りました。メイジーとラルフとウィナカーです。
人形たちは、もちろんおしゃべりすることはできませんでしたけれども、出窓にすわって、まわりのできごとをじっと見つめつづけていました。
なんねんも、なんねんも、なんねんも。森かげの小さな家で。

ある日、ブルーノーが出かけたままもどらず、出窓の人形たちはとり残されます。
長い長い時間が流れ――・・・小さな家には木や草がはびこり、やがて蔽い隠されてしまいました。
いばらの奥で青白くまどろむ家。いつまでとも知れず、待ちつづける人形たち。
それはまるで、ねむり姫のように。

本のあいだでひっそりと忘れ去られた押し花を思わせる、淋しそうな色彩の絵本。
時のしずくを栄養にして繁茂するしたたかな森の精気。もの言わぬお人形。
あまりにもしずかであまりにも美しいので、私はかなしくて、けれど満ちたりた気持ちになってしまうのです。幸福が自分だけのひそやかなものであることに、それは似ているかもしれません。

ねむり姫は王子のくちづけで目をさます―― この、森かげの家は――?

(原題『THE HIDDEN HOUSE』)
Author: ことり
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