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『言い寄る』 田辺 聖子

評価:
田辺 聖子
講談社
¥ 1,575
(2007-06-16)

昭和49年から57年に出版された田辺聖子さんの恋愛小説三部作――『言い寄る』、『私的生活』、『苺をつぶしながら』――が30年ほどの時をへて、復刊されました。
装丁が、すごくきれい・・・。

この『言い寄る』のお話は一巻め。31歳の乃里子が、自分とよく似ていて一緒にいると楽しい男・剛、初めての悦楽を教えてくれた大人の男・水野、そして愛しているのになかなかなびいてくれない男・五郎のあいだでゆれ動きます。天真爛漫な女友達の美々が乃里子の恋をひょうひょうと引っかき回してくれるのも読みどころ。
着慣れたシャツみたいにするする読めちゃうお話は、魅力的な登場人物が滑らかな大阪弁でくり広げるかけひきも楽しい。そんななかに、ものごとの真理をつくような一文たちがさりげなく盛りこまれているのです。
しかし、いま、私には分った。
世の中には二種類の人間がある。言い寄れる人と、言い寄れない人である。私にとって五郎は「言い寄れない」人であった。ほんとに言い寄れるのは、あんまり愛してない人間の場合である。

このお話が30年以上もまえに書かれたなんて、びっくりします。ぜんぜん色褪せていなくて、それどころかぐいぐいお話に引き込まれてしまいました。
もうけっして若くはなく、かといって中年にはまだ遠い独身女性。
たまらなく好きで手に入れたい男と、好いてくれる男。ゆれる女ごころ。
愚図愚図していたら、いつのまにか状況はめまぐるしいイキオイで変わっていた――ちょっとした心の機微にさえうなずける場面がいっぱい。
三部作の主人公は、すべておなじ女性なのだそうです。このあとに続いていく物語で乃里子さんはいったいどんな人生を歩むのやら・・・とても楽しみです。
Author: ことり
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