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『西瓜糖の日々』 リチャード・ブローティガン、(訳)藤本 和子

評価:
リチャード ブローティガン
河出書房新社
¥ 842
(2003-07)

いま、こうしてわたしの生活が西瓜糖の世界で過ぎてゆくように、かつても人々は西瓜糖の世界でいろいろなことをしたのだった。
あなたにそのことを話してあげよう。わたしはここにいて、あなたは遠くにいるのだから。

コミューン的な場所、アイデス<iDeath>と<忘れられた世界>、そして私たちとおなじ言葉を話すことができる虎たち。家も橋も、死装束さえも、すべてが西瓜糖でできた世界――透きとおって消えてしまいそうに脆い、微妙な均衡が保たれているアイデスについて、名前をもたない「わたし」が語りはじめる物語。

混沌と、とても不思議なお話でした。
時を超え、いくつかの世界がつながっていくさまは、まるで夢のかけらを渡り歩いているみたい。ぽっかりと空いた誰かの心のすきまにこそ存在するような・・・ふわふわ謎めいた迷子のような浮遊感が好き。
ぜんたいを、甘美な消失の匂いがつつんでいます。淡い色。そう、水っぽくてちょっとぼんやりとした西瓜のうすあまさ。損なわれた世界。
しずかで優しくて残酷な、奇想うずまくこんなメルヘンは、やわらかな毛布にくるまり一人でこっそり夢心地で愛していたい。
これは死にもっとも近い‘夢の果て’でのできごとだから。そしてブローティガンさんの文章こそが幻想であり・・・夢そのものなのだから。

(原題『IN WATERMELON SUGAR』)
Author: ことり
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